category: お腹がすきました。

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お腹がすきました。 .. 番外編

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「お兄ちゃん」「どうした妹よ」 某月某日。ある日の昼下がり。会社近くの喫茶店に私は兄を呼び出した。 5つ年上の兄は有名な玩具メーカー企業に勤めていて、子供向けの商品企画を担当している。開発アイテムを考案するだけではなく、営業部と共に小売店との商談を進めたり、生産現場である中国工場に出張する事も多く、多忙な日々を送っているみたいだった。そんな兄とこうして会うのは実に久しい。 しかし今日は。無理やり時...

お腹がすきました。 .. 23

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 ―――翌日は快晴だった。 昨日までの豪雨が嘘のような晴れ模様。雨が止んだ後の外はひんやりと肌寒い。初夏の風に乗って、緑のみずみずしい空気が肺に入り込んできた。 路傍にひっそりと咲いているシロツメクサから透明な雫が滴り落ちて、青葉に弾ける。アスファルトに残る水溜りには雲ひとつない、澄んだ青空が映し出されていた。 助手席に置いたままの袋を手に取り、運転席から降りる。まだ朝の6時前、周囲に人の姿は見当たら...

お腹がすきました。 .. 22 *R18

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 きっとお互い経験済みだろうと。そう思っていたのはどうやら俺の勘違いだったようで。「……俺が最初の男でいい?」「キリ……、郁也さんがいい、です」「……うん」 黙っていてごめんなさい、蚊の鳴くようなか細い声が届く。面倒だと思われるのが嫌で言えなかった、彼女はそう申し訳なさそうに呟いた。 勿論そんな事思うはずもなく、むしろ最初の男に選んでくれたことに喜びすら感じた。優しくしよう、そんな一種の義務感のようなも...

お腹がすきました。 .. 21 *R18

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「……キリタニさん」「ん?」「……しない、んですか」 何を?そんなの、聞き返さなくてもわかる。「……ゴム持ってないから、今日はいい」 本当のところは、もう彼女を自分のものにしたくて仕方がない。けれど今日、まさか彼女をこうして抱くことになるなんて一切思っていなかったから、準備なんて当然している訳もなく。 「つけないで外に出す」なんて、本当に果たせるかどうかもわからない約束を押し付けるつもりもなかった。無責...

お腹がすきました。 .. 20 *R18

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「……濡れてる」「……そういうことは言わなくてもいいです」 口調はいつも通りなのに、見下ろす先にある水森は、普段の無表情とはかけ離れていた。もどかしい程に施した愛撫は彼女から余裕を奪い、頬は赤く上気し、瞳は熱に浮かされたように潤んでいる。濡れた唇の隙間から漏れる吐息は色香を伴っていて、誘われるように薄く開いているそれに噛み付いた。 口付けながら下着の中に忍び込んだ指先が蜜を拾い、敏感な箇所を探る。くぐ...

お腹がすきました。 .. 19 *R15

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 それからは、なんというか。いつも通りの、俺と水森だった。「……あんなに食べて、なんでそんなに痩せてんの?」 それは素朴な疑問だった。普段から水森は人並み以上に食べる。その割には、さっきラグの上で組み敷いた時に触れた彼女の体はとてもほっそりとしていて、チキンボロネーズを6個ぺろんとたいらげてしまう程の暴食漢にはとても見えなかった。「それは、食べた分だけ消費してるから」 けれどその答えは意外と早く返っ...

お腹がすきました。 .. 18 *R15

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「……!」 一瞬、動きが止まる。水森も驚いたように目をぱちりと開けた。 それは俺の鞄から鳴り続けている。一瞬迷ったけれど、無視する事にした。今は彼女を優先したい。「……っ、キリタニさん、」「ん」「電話、鳴って、ます」「うん」「出たほうが」「いい」「でも」「―――出て欲しいの?」「んっ、あ……!」 単調だった舌の動きを変則的なものに変えれば、快感の質を変えた刺激を受けた彼女から一際、甲高い声が上がる。吸い付...

お腹がすきました。 .. 17 *R15

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 ――がっつく程の事じゃない、なんて。 どの口が言うんだ、改めてそう思う。 所詮、男の理性なんて豆腐のように儚くて脆い。 少し。ほんの少しだけ、彼女に触れた。それだけだ。 たったそれだけで、それまでの思考もプライドも理性も全部―――あっさりと崩れ落ちた。「んっ……」 ぽつりぽつり、雨の雫が小刻みに窓を打つ。 テレビから漏れる、誰かと誰かの笑い声。 それらの雑音も素通りする程に、彼女の甘い吐息だけを耳は器...

お腹がすきました。 .. 16

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 水森の様子がおかしい。  エレベーターを待ってる間、乗っている最中、3階通路を一緒に歩いてる時も。  彼女は一言も言葉を発しなかった。  水森は普段からそんなにお喋りな方ではない。そして俺も、川井のようにべらべらとものを話すタイプではない。けれど、その場の雰囲気に合わせて会話を盛り上げるべきか口を閉ざすべきか、くらいの判断は互いに出来る。特に彼女は、その場の空気を読むのは上手い方だった。  だから、...

お腹がすきました。 .. 15

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 駅前に新しいお寿司屋さんが出来るそうです、と以前水森が教えてくれた。 水森の情報収集能力は、とにかく精度が高い。迅速・正確・的確。加えて信憑性が高い。全てのスキルが兼ね揃っている。その能力はご飯会の打ち合わせ時もいかんなく発揮する。新しい店のリサーチなど、彼女にとってはお手の物だ。一体何処から仕入れルートを確保しているんだと疑ってしまうくらい、彼女の持つ情報は的確だ。 そしてその情報を元に決めた...

お腹がすきました。 .. 14

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 エレベーターから降りた後。玄関口へと目線を向けた先に、水森がいた。ちょうどエントランスを抜けてこっちに向かってくる。 彼女の両手にひとつずつ握られた、大きな買い物袋。コンビニで購入してきたらしいお菓子が、レジ袋の中にぎゅうぎゅうと詰められている。まさかあれ全部、自分専用の食べ物じゃないよな。彼女なら十分有り得る話なだけに苦笑してしまう。大食いチャンプの水森なら、あの程度の量など屁でもないだろうけ...

お腹がすきました。 .. 13

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 腹ペコでぶっ倒れていた水森を助けたあの日から4ヶ月半ほど経った。「なあ、マーケの子から今日聞いたんだけど。お前、ミズキチちゃんと付き合ってるってマジ?」「マジ」「なっ、テメッ、みんなのミズキチちゃんを独り占めしやがって!」 横から勢いよく片腕が伸びてきて、首を絞められた。痛い。そしてウザイ。 同じ所属部課であり同期の川井は何かと気が合う友人でもあり、同時に悪友でもある。そしてコイツは社内一の情報...

お腹がすきました。 .. 番外編

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*本編序盤の水森さん視点 ――やっぱり、お腹に何か入れておくべきでした。 後悔先に立たず。その言葉の真意を実感したのは、夕闇迫る時間帯に差し掛かった頃。買い物帰りの主婦の姿も見当たらない、住宅街の一角。私は空腹のあまり、ぺたんと地面に座り込んでしまった。一応成人迎えた大人がこの様だ。本当、情けない。 普段から馬鹿みたいに食べまくる癖に、どうして今日だけご飯を抜いてしまったのか。朝食・昼食抜きのまま、...

お腹がすきました。 .. 12

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「ちょっとだけ、待っててください」「え」 俺の返事も待たずに部屋の奥へと消えていった水森を待つこと数分。奥からカシャン、と金属音の様な鈍い音が響いて、パタパタと走りながら俺の前に戻ってきた。けどさっきと何かが違う。水森の両腕に、毛がもっさもさの生き物が2匹抱えられていた。さっきの金属音はケージを外した音だったらしい。 彼女の両腕に抱えられていたのは、茶色い毛が生え揃った小さなウサギだった。大きな耳...

お腹がすきました。 .. 11

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「か、考えるまでもないです」「……え」「私も、好きです。キリタニさんのこと、好きでした」「……」「私もお付き合いしたい、です」 膝上に置いた新聞の、その上で作られている握り拳は微かに震えている。その震えが緊張からなのか、それとも怯えからなのかはわからない。けれど水森の口から零れた告白は、まるで筋が一本通っているかのように真っ直ぐと、俺の耳に届いた。 正直、不安な部分もあった。デートに誘った事も含めて、...

お腹がすきました。 .. 10

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 水森が事前に予約をしてくれた海中レストランは、床以外は辺り一面ガラス張りの、深海に染まる蒼の空間が広がっていた。何十種類もの魚が目の前を悠々と泳いでいるその光景は、圧巻としか言いようが無い。客の目線は食事より外に釘付けになってしまって、それは俺も水森も同じだった。まるで海の中にいるんじゃないかと錯覚してしまうような造りに、感嘆の息が漏れる。 ずっとここに来てみたかった、そう言った彼女の表情は相変...

お腹がすきました。 .. 09

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 ――デートに誘った次の日。水族館に行きたい、そう彼女は言った。 意外な返答だった。水森の事だから、有名スイーツ店や行列の並ぶ人気ラーメン店の食べ歩きツアーにでも引っ掻き回されるかと思ってた。彼女と2人で過ごせるならそれでもいいとか思っていた自分も大概だ。けれど予想に反して返ってきた答えは、水族館。普通すぎて、本当にそれでいいのかと何度か尋ね返してしまったくらい。 そんな俺の態度にも、彼女は表情を変...

お腹がすきました。 .. 08

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 ――誰とでも仲いいし。友達多いんじゃない。「……」 ――人気あるぜ、あの子。中には実際狙ってる奴もいそうだけどな――「……水森ってさ」「はい」「今付き合ってる奴とかいる?」 突然の話題転換に目を丸くしている彼女を、ただ黙って見つめ返す。けど何だか居た堪れなくなって、俺から先に視線を逸らしてしまった。 これまで何度か夕飯を共にして、色んな話をした。けど、お互いの恋愛事情に関して話題に上がった事は無い。なんと...

お腹がすきました。 .. 07

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 水森曰く、俺達は『ご飯仲間』らしい。グルメ友、略してグル友とも言っていた。 彼女とは週2、3回ほどのペースで夕飯を共にする仲になっていた。彼女に以前教えてもらった例の店で待ち合わせをする時もあるし、美味しいと評判の店を見つければ、一緒に足を運ぶ事もある。 出向く先の殆どは、大勢の客で賑わう大衆居酒屋。値を張るような綺麗で静かなレストランは、彼女はあまり好まなかった。理由は単純で、「一皿に乗ってる量...

お腹がすきました。 .. 06

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 水森さやかは基本的に笑わない。 と言っても、決して常に不機嫌だとか、愛想が悪いという訳ではない。どちらかといえば社交的な性格で、誰かと会話を弾ませている姿も社内でよく見かける。 嬉しいときは頬がほんのり紅潮するし、びっくりした時は目を少し見開いて驚いたような顔つきになる。すごく、わかりづらいが。 いつも無表情に近いが、それでもひとつひとつの感情に、僅かな表情の変化はある。ただ、小さな変化なので所...

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