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08:26:48
08

お腹がすきました。 .. 18 *R15

「……!」



 一瞬、動きが止まる。水森も驚いたように目をぱちりと開けた。
 それは俺の鞄から鳴り続けている。一瞬迷ったけれど、無視する事にした。今は彼女を優先したい。



「……っ、キリタニさん、」

「ん」

「電話、鳴って、ます」

「うん」

「出たほうが」

「いい」

「でも」

「―――出て欲しいの?」

「んっ、あ……!」



 単調だった舌の動きを変則的なものに変えれば、快感の質を変えた刺激を受けた彼女から一際、甲高い声が上がる。吸い付いて、痛みのない程度に軽く甘噛みすれば、細い腰が弓なりに跳ねた。



「あ……や、だめ」

「俺、電話に出たほうがいい?」

「……っ、」



 言いながら、けど胸への愛撫は止めないまま。



「多分、家からだと思うけど」

「っ……ん、」

「別に大した用件でもないと思うけど」

「……ぁ…、待っ……!」



 ストッキング越しに内股へと手を這わせれば、その意図を悟った彼女の口から制止の声が上がる。けど、明確な意思を持って動く手は彼女の言い分を聞き入れる様子はなく、徐々に上へと移動していく。
 電話はまだ、鳴り続けている。



「家からの電話に出れば、俺帰るかもしれないけど」

「……あ」

「どうする?」

「……」

「水森に任せる」



 我ながら酷いとは思う。こんな思わせぶりな事を言って、彼女に選択を迫るなんて。
 ぴたりと動きを止めて、身を起こして彼女を見下ろす。戸惑いを帯びた瞳と視線が交差する中、ぴたりと電話の音が止んだ。切なそうに顔を歪めた彼女が、ぽすん、と俺の胸元に手を置く。少し、乱暴的に。



「意地悪です」

「ごめん」

「………帰…らないで」

「ん?」

「まだ、帰んないで」

「……帰るわけないだろ」



 すっかり上気した頬は、触れれば酷く熱かった。身を屈めて、耳元にキスを落とす。



「今日、泊めて」

「……」

「いい?」

「……はい」



 蕩けた表情のままに微笑まれると、本当にやばい。可愛すぎて、どうにかなりそうだった。
 けれど、さっきまでの身を焦がすような激情は今、俺の中にはなかった。
 狂おしいほどの欲はあっさりと鎮火して、別の感情が胸に押し寄せてくる。優しくしたいとか、幸せにしてあげたいとか、そんな温かな想いが心を満たしていく。帰らないで、そう素直に告げてくれた彼女の本音を聞いただけなのに。本当に参る。まるでこの子の手のひらの上で転がされてるみたいだ。

 もう一度体を起こして、彼女の手を掴んで引き寄せる。わ、と小さく声を上げた水森を起こしてから、また腕の中に閉じ込めた。柔らかい髪質に顔を埋めて、漂うシャンプーの香りを吸い込む。さっきから俺のされるがままになっている彼女はやっぱり、抵抗する様子はなかった。



「こっち、移動する?」



 指し示したのは、すぐ横にある彼女のベッド。ロータイプのベッドは、俺と水森の膝下くらいの背の低さしかない。
 俺の胸に顔を埋めたまま、水森はこくん、と頷いた。彼女を抱いたまま、横に倒れる。ぽすん、と柔らかい毛布の上に2人で一緒に転がった。横倒れのまま至近距離で目が合う。冷静さを取り戻していた水森は、いつも通り、感情を伴わない瞳を真っ直ぐ俺に向けていた。そんな彼女の頬に手を添える。そうすれば少しだけ、目元が柔らかく細められた。



「背中、痛くないか?」



 ラグが敷いてあるとはいえ、ずっとフローリングの上に寝転がされていたんだ。背中が痛んでいないか、今更ながら心配になった。



「大丈夫です」

「そっか。ごめんな」

「いえ」

「ちょっと、がっつき過ぎた」

「嫌じゃなかったから、平気です」

「怖くなかった?」

「萌えました」

「………」



 こんな時でもやっぱり安定の水森だった。
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